アメリカのインストラクター・Jeffさんの教え
公開日:
:
最終更新日:2014/08/03
未分類
サンフランシスコのパラグライダースクール、「Airtime of San Francisco」のインストラクター、Jeffさんが書いている安全に関する記事を翻訳しました。 (ご本人から翻訳掲載許可を頂いています)
Jeffさんは、1988年からハンググライダーとパラグライダーのインストラクターとして活躍されている方です。これまで沢山の講習生が、おなじような事故を繰り返していることから、下のような安全指針に纏めたそうです。 ここまで安全への考え方を取りまとめた文章は貴重で、日本でも共通に使えることが多いと思います。 (私自身にとっても、反省すべき点が多々ありました)
——————————<Jeff さんの記事>————————-
安全マージンを取ろう
パラグライダーにとって、「安全」は全てのことが関連してくる巨大トピックです。 あなたがパラを始めたときは、あなたのサポートをしてくれて、安全に関する装備と技術をマネージしてくれるような、良いインストラクターを見つけることが、まずスタートでしょう。 まずは、起こりうるリスクに対してどう対処するのか、(リスクマネージメント)ということが長く続けるための重要ポイントになります。やがてパイロットになれたときは、安全を保つためにはエゴと無頓着からの脱却が必要になります。
私が長く言い続けているパラグライダーの危険性は、「パラはなんとも簡単に始められる」というこです。新しく始めるパイロットにとって、簡単に始められて、他のスポーツに比較してすぐに上達するように感じられるでしょう。 実はこの「簡単」ということが、安全に対する考え方を間違えてしまう原因になります。 初心者だったパイロットがある程度上達したときに、「中級者症」 (Intermediate Syndrome)と呼ばれる状態が現れることが良くあります。 「中級者症」では、自信過剰がパイロットを危険な状況や、事故に導く恐れがあります。全てのハイリスクスポーツにおいて、「Guard up」はいつでも必要になることなのです。
高リスクのチャレンジにとって、危ういことを感じる、というのは良いことです。沢山のパイロットに事故が起こり、あなたが例外ではありえないことを実感しましょう。ときとして、ミスを犯さない、と考えてしまったりして安全に対する取り組みを軽視してしまったりしがちです。 パラグライダーのようなスポーツにおいて、何かをミスする要因は限りなく沢山あるのです。 常にガードを上げているつもりであれば、「安全」ということが最大の優先度として保つことができます。この考え方をしっかりしていれば、フライトにに対する考え方が消えてしまうことはありません。 毎日のフライトの度に、遠くへ視点をもっていくことで大きな目標を達成することができます。
パラグライダーを始めた最初のトレーニングで、自分を信じること、注意ぶかくすること、そして危険に対して敏感になることをしっかりとたたき込みましょう。 態度が全てのパラグライダーのFacetsをコントロールします。生徒の中で、技術はみにつけたけど、感情をコントロールできない人はリスクが高まります。 逆に、運動能力はすぐれていなくても、態度がよい生徒は上達も早いし、安全なフライトを実現します。 良い態度が、技術向上よりも重要なのです。 技術向上に時間をかけることはできますが、悪い態度や判断を持ってしまうと、一瞬のうちに破滅的な結果を招くことがあります。
「態度をおしえることはできない」と言った人がいます。態度とか考え方は、それぞれの生徒の内面からくるので、安全に対するアプローチや考え方を教えることは限界があります。インストラクターにできることは、生徒が良い考え方を持てるように、「気づき」を与えることでしょう。 パラグライダーの生徒として大事なのは、「常にガードを上げる」ことの必用性を認識することです。フライトプランを立てるとき、そして判断をするとき、「安全」を常に最高の優先度にあげておくべきです。安全に対する態度と考え方が、結局の所パイロットとなってからも鍵となります。
安全への4項目
結論として、安全のために必要なことは、たった4項目です。
- 準備
- 良いテイクオフ
- 充分な高度余裕をもってランディングに届くこと
- 良いランディング
準備
- 天気予報と、実際の風の様子、その他ありとあらゆることから、今日のフライトが安全であるかどうか、判断するための情報を集めます。
- 装備を定期的にチェックしておきます。
- 全てのフライトに先立ち、全ての装備をチェックします。 もしも何か問題が見つかったら、飛ぶのは中止です!
- 1本1本のフライトごとに、必ずハーネスの接続をチェックします。
- 自分の精神状態もチェックして、正常な気持ちでいることを確認します。
- グランドハンドリングと立ち上げ技術をいつも練習して、最新の技術にしておきましょう。
- 上に書いた全てのことを毎回行って、「習慣」にしておきます。 「習慣」にすることで始めて、チェック忘れを防ぐことができます。
良いテイクオフ
- 「成功フライト」は、「良いテイクオフ」で始まる。 良いテイクオフは、充分な高度に達するまで両足を下ろしていること。
- テイクオフを試みている時は、何か間違いがあったときにすぐに中断できる能力を身につけよう。 いつ中断するか、という判断をできるようになることと、いつでも中断できる能力を身につけると、あなたはより良いパイロットになれます。
適正な高度でランディングに戻ろう
- フライトの最大の目標は、ランディング場に充分な高度で到達し、ランディング上空の風の様子を観察して、アプローチの計画を作れるようにすることです。
- これが最優先であって、それ以外の目標はそれ以下です。
- ランディングに戻れない=アウトランディング といことです。アウトランディングは多くの危険をはらみ、事故につながる可能性も高くなります。
良いランディングとは
- 成功フライトは、良いランディングで終わります。.
- ランディングエリアに、向かい風で進入することが重要です。
- ランディングアプローチも練習して、目標とするターゲットのできるだけ側に着陸できるように、ランディングアプローチの練習をやりましょう。
- フレアーをかけるタイミングも、フライト毎に練習しましょう。
全体像をつかもう / リスクマネージメント
安全に関するもう一つの重要なことは、事故につながるミスは些細なこともある、ということです。たとえば、立ち上げ練習でパラグライダーを凧のように操作する練習(kiting)がありますが、これは両足が地上についているので、空を飛ぶ練習ほどは危険が無いだろうと思いがちです。 けれども風が強くなったりして、グライダーに引き摺られるような事態になる場合もあるわけで、怪我をすることになります。よくkitingの練習をヘルメット無しでやるパイロットがいますが、安全に対する意識が欠けています。パラのようなスポーツでは、いろいろな現状から予期できない危険を察知することが大事なのです。 誰一人として事故が起こるのを承知の上でフライトする人はいません; 事故は予期できない事項、あるいは準備不足から起こるのです。 とっても大きな状況しか読み取れないと、結果として事故に至る隠された問題点を見つけ出せないことになります。 状況を読み取るための情報源は沢山あります。 パイロットとして一人前になる間に、ベテランのパイロットからも沢山教えてもらえるでしょう。質問をどんどん投げて、沢山の話しを聞くことでさらに多くの情報を得ることができます。事故の状況や、エリアの危険情況などの話しは、危険な場所を避けることができたり、おなじような情況に巻き込まれたときに次に何をするかという判断に役に立ちます。 地元のクラブに所属するのは、情報取得に極めて有効です。
中級者シンドローム
中級者シンドロームとは、パイロットが練習を始めてある程度上手くなったときに、「私はパラをマスターしたっ!」と思い込んでしまうことです。みんな上手くなっているのは間違いないのですが、大事なことが未熟だったりします。 「中級者」という言葉がついているのは、この問題が起きるのは、フライト経験が比較的少ない生徒に発生することが多いのです。このシンドロームは、あなたの「ガードを下げる」 ことになり、やがて未だ把握していないリスクを見つけることになります。 毎年、沢山の事故が同じ理由でおきます、つまりパイロットが事故を振り返ってみると、事故原因の真の理由が自信過剰と、なにか1つの見落としにあるのです。 リスクを認識することと、正しく対処するためには、幅広い視野をもって、謙遜な心が必用なのです。
私が長く言い続けてきたことを繰り返しますー “パラグライダーで最も危険なことは、簡単にはじめられること.”。 講習を終わったあとでも、進歩を続けること、そして自分自身を見つめ直して、決して全てをマスターしたと思わないことが大事です。あなたがどんなに上手くなっても、フライトに関しては常に学ぶことがあるのです。
パラグライダー語録:
- プリフライトチェックでは仮定をしない!
- プリフライトチェックは決まり切った流れにすべきですが、決まり切った仕事としないで、ステップを踏んで、何か悪いところを見付けるんだ、という考えで進めましょう。
- キャノピーをザックから取り出す毎に、全ての装備にプリフライトチェックを行うことを習慣にしてしまいましょう。
- テイクオフは取りやめ可能、着陸は必ず必用!
- フライト取りやめはいつでも決断できる。 良くないコンディションでテイクオフしてしまったら、危険な情況でランディングしなければならないかもしれない。
- 上空で、「しまった地上にいれば良かった~」と後悔するよりも、地上にいて、「飛んでいれば良かった~」と思う方がよい。
- あなたのパラグライダー用語から、「たぶん」と、「おそらく」を消し去ろう。
例:
- 「たぶん、ランディングに届くだろう」
- 「おそらく、テイクオフしてしまえば上空は安定しているだろう」
言い換えると – 確実性にこだわれ! フライト関連の決断をするときに、何であれ不確かな要素があったら、フライトを取りやめよう。 もしもあなたが、フライトすべきかどうか悩んでいるのであれば、なやみを捨てて地上にいましょう。
実際の例:
- たくさんの友達と一緒にフライトに来て、風がちょっと強めだけど、友達の何人かはフライトを開始–もしもあなたがフライトに不安がある場合 – あなたの心を信じて、飛ぶのをやめよう。
- インストラクターの推薦よりも、ちょっと上級機を友達が売ってくれるという話しをしてくれた場合 – 誰を信じるのか考え直して、条件が整うまではランクアップを待とう。
自分で経験することが最高の先生、でも乱気流の中を飛ぶ他人がいたら、その人を先生にしてしまおう。
上の言葉は、乱気流だけでなく、その他の危険にも当てはまる。 他人の動きやフライトから、どうやって危険なコンディションを避けることができるのかを学び取ろう。
避けなければならない危険項目のリスト:
- 乱気流が起きているときの、テイクオフ、フライト、ランディング!
- 強風での、テイクオフ、フライト、ランディング!
- 特殊な技能を要求するエリアでのフライト!
- ツリーランディング!
- 電線!
- 水へのランディング!
- 複数の重要装備を一度に追加すること!
一般的なガイドライン:
トレーニング:
- 全体を網羅している授業を受けよう:
- 良いインストラクターを見つけ出そう!
- インストラクターと意思疎通を図ろう
- 基礎トレーニングのあと、さらにスキルアップ:
- 山やサーマルクリニック
- マヌーバーコース
- 基礎コースと上級コースを繰り返し受けよう
- フライトタイムとグランドハンドリングの時間を合わせよう:
- 2時間フライトしたら、すくなくとも2時間のグランドハンドリングをやろう。.
フライト日にやること:
- その日の気象状況をチェック:
- 天気予報のチェック
- 山頂の風速をチェック
- 風のアセスメント
- 自分の気持ちのアセスメント
- 地元のパイロットから、気象に対して情報を得る
- 装備の全体的チェック
- 「これは大丈夫だろう」という仮説を作らずに、自分のためにちゃんとチェックする習慣をつけよう。
装備:
翼の選定:
- インストラクターと相談しながら、あなたの技術で充分に乗りこなせる機体を選びましょう。
- 2機目を選ぶときに、周りに惑わされないようにしましょう。 周りの人が最新で、最高性能の機体に乗っていても、あなたはプライドを持って、安全性の高い機体を選べば良いのです。
良いヘルメット、そして衝撃吸収のハーネスを選ぼう:
- 安全性が大事、ということは当たり前のことです。ところが、私の生徒の多くは、性能よりも格好で選んでしまうことがあります。 充分な防護性能のあるフルフェースヘルメット、そして最大のバックプロテクションがあるハーネスを選びましょう。
ブーツは安全のために重要な装備:
- 良いブーツは、足首をひねったり、捻挫したり、骨折したり、ということを防いでくれます。 パラグライダーの専用ブーツは、足首だけでなく(膝にかけて)サポートがあり、さらに衝撃吸収材を靴底に使っているのもあります。
ハーネスに、「フックナイフ」を装着:
「フックナイフ」は、V型のカバーに納められたナイフで、スカイダイビングやパラグライダーからパイロットを素早く切り離すのに使われます。 刃がケースの内側についているので、怪我をする心配がなく、ライザーやラインから確実に切り離すことができる優れものです。
簡単な道具ですが、河原や木上にランディングした場合に、バックルを外すことができないときに素早くパラグライダーを切り離すことができます。
風があるときは、常に風速計を使おう!
経験豊かなパイロットであっても、風速5m/秒と風速6m/秒を見分けるのは至難の業です。
非常用にアマチュア無線機を持とう!
アマチュア無線の免許取得は簡単だし、それほどお金がかかりません。何と言っても非常事態に遭遇したとき、無線がとっても重要になります。
- 訳注-
フックナイフは、下のような形状の安全ナイフですね。 (日本では、ライザーカッターとか、ラインカッターとか呼ばれているようです。 二つ折りのナイフよりも、素早くラインを切断できるし、安全ですね。)
Advertisements
Advertisements
- PREV
- ウォーターランディングの危険
- NEXT
- やったことない人の誤解